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【ドイツ・フランス・イタリアの神話・伝承】人よりも空と海と地を畏れる・日本神話と似ているケルト神話

執筆者の写真: 小園隆文小園隆文

こんにちは。文明史家・日本人のための世界史作家・生命力を高める文章家の小園隆文です。


ブログを読んでいただき、ありがとうございます。

今日は【ドイツ・フランス・イタリアの神話・伝承】シリーズ


ケルト神話についての解説・考察をお届けします。


過去のブログはこちらよりお読みください。



ケルト神話の一番の特徴は、天地創造の物語がないことです。宇宙や世界、生き物がどのように創られたのか?という物語はありません。あったのかもしれませんが、長いこと独自の文字を持たなかったため伝わらなかったのか、それともドルイドというケルト社会で大きな影響力を持つ僧が教えなかったのか、原因は分かりません。


そんなケルト人にも、畏れるものがあります。かの有名なアレクサンドロス大王との間で交わされたこんな話が残っています。


紀元前334年頃、アレクサンドロス大王はアジア遠征に当たって、ギリシアを守るためにケルト人との同盟を結ぶことにします。そのケルトの使者を謁見した大王は、このように訊ねます。「あなた方ケルトの民が最も畏れるものとは何か?」


大王は「それはあなた」という答えを期待していたかもしれません。そして同時に「もしケルト族が裏切った時にはどうしてくれようか?」ということも…。この質問にケルトの使者はこう答えました。


「私たちはどんな人間も恐れません。ただ私たちは、空が私たちの上に落ちてこないか?ということだけを畏れます。」これに続けて


「もし我々が大王との同盟を守らないのならば、空よ、我々の上に落ちろ!我々を木っ端みじんに砕け!大地よ、我々を全て飲み尽くせ!海よ、割れて我々を巻き込め!」


この答えに「ケルト族は信頼に足る」と判断した大王は、後顧の憂いなくアジア遠征に向かいます。


地上のどんな権力者よりも、他の何よりも、人智ではどうすることもできない空・海・地を畏れた。それがケルト人であり、その神話です。


そのケルト人たちは、神々は天上ではなく、地下から地上にやって来たと信じていました。ドンヌという「死と冥府の神」がいて、「人は皆ここから生まれて、再びドンヌの家に還る」と伝えられています。このドンヌ神は嵐を起こして船を難破させることもあれば、家畜や穀物を実らせて豊穣をもたらすこともあります。それはまさしく生と死、生命の円環です。ケルトの遺跡にある渦巻き模様のように、生と死は途切れることなく続きます。ケルト神話では神も人も動物も自在にその姿を変え、天上・地上・地下を自由に行き来します。そこでは万物が流動、円環しています。


『侵略の書』という古書に、エリン(アイルランド)に神々が住むようになった経緯が書かれています。書かれたとされるのが950~984年なので、キリスト教『創世記』の影響をかなり受けていますが。


それによるとノアが方舟を作っている時、息子ビトが「自分と娘セゼールのために部屋を」と求めます。するとノアは「世界の西の果ての島に行け。そこなら洪水も届かない」と言います。ビト・セゼールそして人々は七年間も海を漂った末に、洪水の40日前にエリンに漂着。しかし結局はほとんどの者が死んでしまい、フィンタンという者だけが生き残ります。


千年生きたとされるこのフィンタンが、エリンにやって来た神々の種族のことを語ります。それによると、①パーホロン②ネメズ③フィルボルグ④トゥアハ・デ・ダナーン⑤ミレー の順番でやって来て興亡を繰り広げていった、と伝わっています。そして最後のミレーの後から、人間の歴史に入っていきます。


この神々たちの間で繰り広げられた興亡に、唯一絶対的に強い存在というはいません。少しだけその後の歴史と結び付けて解釈すると、これがヨーロッパ大陸で繰り広げられた諸国間の勢力均衡、バランス・オブ・パワーへの影響を感じるのは私だけでしょうか。その時々の覇権大国、皇帝、ローマ教皇すらもその勢力があまりにも強くなり過ぎて、他国にとっての深刻な脅威となってくると、同盟を組んでそれに対抗して封じ込める。そして大体四~五の大国間の力のバランスを保ちながら、ヨーロッパ大陸の秩序を作っていく。このヨーロッパにおいて繰り広げられた勢力均衡は、その発想と行動のルーツを辿っていくと、最盛期には大陸の大半に居住していたとされるケルト人、そして彼らが信じたそのケルト神話の神々の興亡の影響を少なからず受けているのではないか?この話を聞いて、そのように歴史とのつながりを感ぜずにはいられなかった次第です。


この神々の興亡については、次回以降のブログで解説していきます。


YouTube動画もあります。気に入ったら【いいね!】【チャンネル登録】お願いいたします。


今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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​小園 隆文 こぞの たかふみ

日本人のための世界史作家

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