こんにちは。文明史家・日本人のための世界史作家・生命力を高める文章家の小園隆文です。
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今日は【ドイツ・フランス・イタリア三国史】シリーズになります。
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800年に西ローマ皇帝に戴冠。カロリング・ルネサンスと呼ばれる古典文化の復興運動を起こし、ゲルマン人へのキリスト教布教も進めて、現代の多くの人がイメージする「ヨーロッパ」の基盤を造り、「ヨーロッパの父」と呼ばれるシャルルマーニュ・カール大帝。その大帝も814年に死去。その後を大帝の三男、ルートヴィヒ一世が継ぎます。他の兄弟が早逝したため、幸か不幸か単独相続に。
ルートヴィヒ一世は817年に『帝国整序令』を発布します。この整序令は自分の死後に相続で揉めないように、元気で頭がしっかりしている間に財産相続のことをしっかりと文書にしておこう、というものです。これ自体は王国にとっても王族にとっても、とても有難い話です。死というのはいつかは誰にでも訪れますから、しっかりとそのことを踏まえて生前の元気なうちに財産のことをきちんとしておく。大事なことです。
この『帝国整序令』により、自分の死後は長男ロターリオに西ローマ皇帝位とイタリア王位を、次男ピピンにはアクィタニア王(ガリアの一部)を、三男ルートヴィヒにはバイエルン・ザクセンなどのゲルマニアの地を分け与えることを明記します。そしてピピンとルートヴィヒはロターリオの言うことをしっかり聞いて、兄弟三人仲良く協力して王国を運営していくように、ということも定めます。毛利元就の「三本の矢」によく似た話ですが、ともかくもこれで毎度のようにフランク王国が相続争いで揉めて弱体化していくことを防ぐ手立てを打ちました。
これがその通りになれば、まずはめでたしめでたしということになるのですが、一国の政治も一人の人間の人生も、何が起こるか分かりません。
『帝国整序令』を発布した二年後の819年、ルートヴィヒ一世は二度目の結婚をします。そして四年後の823年、そのユディト妃との間にシャルルという男子が産まれます。これが話を複雑に、そしてドロドロの相続争いに発展していく原因となりました。
ルートヴィヒ一世は後に『敬虔帝』と呼ばれるほどに信仰心が篤い人ではあったのですが、性格はやや優柔不断で、政治面での能力はイマイチ。そしてユディト妃とすれば、やはり自分がお腹を痛めて産んだ我が子にも、相続分が欲しい。そしてそのことをユディト妃の側近たちがけしかけます。そんな妻とその側近たちにせっつかれたルートヴィヒ一世は、シャルルにもアレマニアの領地を与えることに(829年)。
国王にしてローマ皇帝、そして一家の家長である父が決めたことです。その決定は絶対です。それは分かってはいますが、それとは別にロターリオ・ピピン・ルートヴィヒの三兄弟としては、異母兄弟に分前を取られることに対してやはり心中は複雑です。しかもユディト妃とその取り巻きたちの専横が目に余り、それに振り回される形でシャルルばかりをひいきするルートヴィヒ一世に対しても、次第に冷めた目で見つめるようになります。
そしてその積もり積もった鬱積が、ついに爆発します。830年、ロターリオの主導で三兄弟はユディト妃を修道院に監禁。その側近たちは王国外に追放。そして父であるルートヴィヒ一世と異母弟シャルルもやはり修道院に監禁。王家のお家騒動、勃発です。
しかし三兄弟もまた一枚岩ではありません。長男ロターリオが自分たちを手下のように扱うことに、ピピンもルートヴィヒも内心では不満を感じています。そんな次男と三男の心中を察したルートヴィヒ一世は、「私に味方すれば領地を拡大するぞ」と利益で釣って、兄弟の離間を図ります。これがまんまとはまって、ピピンとルートヴィヒは父・国王側にあっさり鞍替え。長男のロターリオ、この後も何度も陰謀を計画するのですが、いつも詰めが甘くて最後に勝ちきれない…。あと一歩で武田信玄になれなかった、そんな人です。
一気に優位に立ったルートヴィヒ一世は、831年アーヘンでの集会で民を前にして復位を宣言。反乱を企てた三兄弟にも寛大な措置で許し、「敬虔王」と呼ばれるにふさわしいところを見せます。
これでルートヴィヒ一世も少し三兄弟の気持ちを慮って統治を進めていくか、と思われたのですが、一度狂った歯車は戻すのがなかなか大変なようです。この後もフランク王国の広大な領地を巡って、悲喜こもごもの駆け引きが繰り広げられていくことになります。
今回はここまで。続きは次回を楽しみにお待ちください。
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