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あの第九が国歌だったことも?ドイツ国歌の秘密

執筆者の写真: 小園隆文小園隆文

こんにちは。「日本人のための世界史作家」小園隆文です。今日もブログを読んでいただき、ありがとうございます。


連日、熱戦が繰り広げられている東京五輪2020。その五輪の見慣れた光景の一つが、金メダルを授与した選手の国歌斉唱です。先日までのサッカーEURO2020では、他国の国歌に対してブーイングを浴びせる場面も見られましたが、あれはよろしくありません。それぞれの国が想いを込めて作った国歌。感情的にはどうあれ、静かに聞くのが礼儀というものです。また、不断はなかなか聞く機会の少ない国の国歌を聞くのも、それはそれで楽しいものです。


さて、そんな数ある国歌の中で、意外と知られていないのがドイツ国歌『ドイツの歌』。この国歌、四番まであるのですが、公の場で歌われているのは実は三番の歌詞、というのをご存知でしたでしょうか。ではなぜ、そのようなことになっているのか?まずは、歌詞内容を見てみましょう。



『ドイツの歌』一番

ドイツよ、ドイツよ、すべてのものの上にあれ この世のすべてのものの上にあれ 護るにあたりて 兄弟のような団結があるならば マース川からメーメル川まで エチュ川からベルト海峡まで ドイツよ、ドイツよ、すべてのものの上にあれ この世のすべてのものの上にあれ


単純に言えば、「ドイツは世界最高!」という内容なので、これだけならどこの国の歌詞にもありそうなものですが、問題なのは太字にした箇所。マース川というのは現オランダ領。メーメル川は現ベラルーシからリトアニアを流れる川。エチュ川は現イタリア領。ベルト海峡は現デンマーク領に隣接する海峡。つまりこの歌詞は、「ドイツ語を話すドイツ人が住んでいる地域がドイツ」という考えで作られたので、現在ではドイツ領ではない地域がドイツに含まれています。これを国歌として歌ったら、「またドイツは外国の領土を脅かす気か?」外交問題になること必至。ですから、これは国家としては無理。続いて二番。


『ドイツの歌』二番

ドイツの女性、ドイツの忠誠 ドイツのワイン、ドイツの歌は 古からの美しき響きを この世に保って 我々を一生の間 高貴な行いへと奮い立たせねばならぬ ドイツの女性よ、ドイツの忠誠よ、 ドイツのワインよ、ドイツの歌よ


素朴なお国自慢です。日本の歌で言えば、「兎追ひし彼の山~」の『故郷』に近い内容でしょうか。内容的にはいいのですが、素朴すぎて国歌としてはやや重みに欠けるのと、ドイツ語ではやや女性差別的なニュアンスもあり、との理由でこれも却下。そして三番。


『ドイツの歌』三番

統一と正義と自由を 父なる祖国ドイツの為に それを求めて我らは皆で兄弟の如く 心と手を携えて努力しようではないか 統一と正義と自由は 幸福の証である その幸福の輝きの中で栄えよ 父なる祖国ドイツ


いきなり高尚な内容になりましたが、これが旧西ドイツ、そして現在のドイツ連邦共和国で正式に採用されています。五輪やサッカーW杯などで歌われるのも、この三番です。ちなみに「幻の四番」とされているのが


『ドイツの歌』(幻の四番)

ドイツよ、ドイツよ、すべてのものの上にあれ

艱難の時にこそ冠たるドイツよ。

艱難の時にのみ愛は

己が強さと清さの程を示さん。

かくて世代から世代へと

ドイツはこれぞと遍く報らすなり。

ドイツよ、ドイツよ、すべてのものの上にあれ

艱難の時にこそ冠たるドイツよ。


力強さはあるのですが、背景に第一次大戦に敗戦後、ドイツの一部を占領したフランス軍に対する反発心から作られたということもあり、第二次大戦の敗北、戦後の周辺諸国、特に仏独友好の観点からもどうか?と、次第に忘れ去られ、今では知る人ぞ知る「幻の四番」となっているそうです。


そして前回、1964年の東京五輪では、当時は東西に分断されていた東西ドイツ両国が、統一選手団を結成して、参加しました。その時に「国家をどうするか?」と議論になり、結果として採用されたのが、ベートーヴェンの第九交響曲『歓喜の歌』。年末になるとよく歌われる、あの一番有名なサビの部分です。これはこれで何とも贅沢な話です。


国歌に歴史あり。国歌はその国の歴史が詰まっています。その歴史に触れてみるのも面白いものです。そして繰り返しですが、国歌斉唱の時はブーイングすることなく、静かに聞きましょう。


今日もブログを読んでいただき、ありがとうございました。







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​小園 隆文 こぞの たかふみ

日本人のための世界史作家

080-7181-7900

​106-0044 港区東麻布1-17-12

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