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イギリスはグループ企業?

執筆者の写真: 小園隆文小園隆文

こんにちは。「日本人のための世界史作家」小園隆文です。今日もブログをご覧いただき、ありがとうございます。


今回も熱戦を繰り広げている、サッカーEURO2020の試合に絡めて。今回は6月18日行われた、イングランドVSスコットランドの試合からです。


このイングランドとスコットランド、本来は「イギリス」という同じ国家に属しています。そして多くの方がこの「イギリス」という国について感じられているであろう疑問は…、


「なぜサッカーとラグビーの時だけ、イングランドとかスコットランドとか、別々のチームになるのか?」


というものではないでしょうか?大雑把に日本にたとえてしまえば、「本州」と「北海道」がそれぞれ代表チームを作って、ぞれぞれが国際大会に出場しているようなものです。こんなことは、少なくとも日本人の感覚ではなかなか理解しづらいでしょう。





そもそも「イギリス」という国の正式名称は、「グレートブリテン・北アイルランド連合王国」というものです。ブリテン島にあるイングランド・スコットランド・ウェールズ、そしてお隣のアイルランド島の北アイルランド、この四つの「地域」が連合して王国を形成している、ということを表している名称です。


しかし、今あえて「地域」と書きましたが、もっとハッキリと言ってしまえば、この四つは「別の国」。それが紆余曲折の時間と歴史の経過を経て、一応「イギリス」という一つの国家を形成していますが、そこにはとても複雑な事情があります。詳しく書くと一冊の本になってしまうので、かいつまんで時系列でご説明していきます。


1282年、ウェールズ、イングランド王エドワード一世との戦争に敗れ、イングランドの植民地のような地位に。息子で後のエドワード二世、「プリンス・オブ・ウェールズ(ウェールズ大公)」に。これ以降、イングランドの時期王位を継ぐ者を、「プリンス・オブ・ウェールズ」と呼ぶ。この称号は現在も使われています。植民地・ウェールズ人(よそ者、という意味)のご機嫌取りのようなものです。


1536年、「ウェールズ合同法」により、ウェールズは正式にイングランドに併合される。イングランド内の「ウェールズ人自治地域」のような位置に。あくまでイングランド人にとって、「ウェールズ=よそ者」。


1603年 イングランド王エリザベス一世、子供を残さずに死去。テューダー朝断絶。血縁をたどって、スコットランド王ジェームズ六世がイングランド王としてはジェームズ一世として即位。同君連合という形式に。この段階では、まだ同じ王様を戴く別の国。


1707年 「スコットランド合同法」により、イングランドとスコットランドが合併。「グレートブリテン連合王国」という名称に。スコットランドの頑強な抵抗で再三拒否されてきたが、この頃になるとイングランドの実力が圧倒的になり、断り切れなくなった。これ以降をもって「イギリス」と呼ぶのが、歴史的には実態に即している。


1800年 やはり「合同法」により、アイルランド王国を併合。「グレートブリテン・アイルランド連合王国」に。


1922年 アイルランド島の南部が独立し、アイルランド自由国。後、アイルランド共和国に。プロテスタント多数派の北部は「連合王国」に残り、現在の「グレートブリテン・北アイルランド連合王国」に。


端的に言うと、イングランドが他の三つの「国」を征服、または実力にものを言わせて、言い分を呑ませてきた歴史です。


これを会社組織に例えて説明しますと、


◎イングランド社が「合同法」という契約によって、1536年・1707年・1800年にそれぞれ、ウェールズ社・スコットランド社・アイルランド社を合併・子会社化。「連合王国ホールディングス」の完成

◎1922年に、アイルランド社で派閥争いが発生。アイルランド社内で議決を取った結果、アイルランド社は連合王国ホールディングスから独立して、完全別会社に。一部の役員・社員だけが「北アイルランド社」として、連合王国HDに残留。


という形になりましょうか。またこの他に、「イギリス連邦」なる、かつての植民地の名残である、緩いつながりの連邦もあります。日本人に知られている国ですとカナダ、オーストラリア、ニュージーランドは、現在でも英女王エリザベス二世を国家元首として戴く、「イギリス連邦」の構成国です。


これもまた会社組織に例えてみますと、


【グレートブリテン・北アイルランド連合王国】ホールディングス


◎名誉会長 イギリス国王 

◎CEO イギリス首相 

◎取締役会 イギリス政府 

◎株主総会 兼 各種部署会議 イギリス議会

◎直営会社 イングランド スコットランド ウェールズ 北アイルランド(一部、独自の決裁権限あり)

◎フランチャイズチェーン加盟店 イギリス連邦諸国(前述のカナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど。ほとんど有名無実化)


という形が分かりやすいでしょうか。企業のM&Aに例えると分かりやすいかもしれませんね。


サッカーとラグビーに関していえば、連合王国内の「四国」の各サッカー連盟、ラグビー連盟がFIFA(国際サッカー連盟)、国際ラグビーリーグ連盟よりも先に創設されたことによる特権です。国際連合やIOC(国際オリンピック委員会)には、「四国」それぞれの加盟ではなく、「連合王国」として加盟しています。


この連合王国、スコットランドには連合王国から独立して、EU(欧州連合)に加盟したい、という動きもくすぶっており、その動向は予断を許しません。今後の「連合王国」を見る際の一助にこのブログがなれば幸いです。


今日もブログを読んでいただき、ありがとうございました。


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​小園 隆文 こぞの たかふみ

日本人のための世界史作家

080-7181-7900

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