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フランスとドイツ 恩讐を乗り越えて

執筆者の写真: 小園隆文小園隆文

今、ヨーロッパではサッカーの欧州選手権、『EURO2020』が開催されています。今年は2021年なのに、なぜ2020?かというと、本来は昨年、2020年に開催予定でしたが、ご承知の通り、新型コロナウイルスの感染拡大により、準備が間に合わなかったため、開催が一年延期されたためです。やはり昨年開催される予定だったのが今年に延期された、東京オリンピック『TOKYO2020』と同じ理由です。


私がそもそも、ヨーロッパ史に興味を持ち始めたのは、ある欧州サッカーの記事がきっかけでした。単にサッカーの試合や戦術、技術の解説だけではなく、対戦する国と国の歴史的背景などが書かれており、そこからヨーロッパ史に興味を持ち始めたのがきっかけです。


安易に「スポーツと政治」を結びつけることはいかがと思いますが、一方でこういうスポーツの国際大会を通じて、諸外国の歴史や文化に関心を持って、学びのきっかけとしていくのもありだと思います。


さて、その一年遅れの『EURO2020』で6月16日、予選グループFの試合で、フランス対ドイツという、いきなりの優勝候補同士の対戦が実現しました。試合自体は1‐0でフランスが勝っていますが、試合の詳細などはネットニュースなどを検索してください。





このフランスとドイツの両国。サッカーだけではなく、政治や経済、そしてEU(欧州連合)でも指導的役割を果たしている、ヨーロッパの中での有数の大国であることは御存じでしょう。特にイギリスがEUを離脱した今、ヨーロッパとEUの将来はこの両国の協調によるところが大きくなってきます。


ドイツが初めて統一国家を持ったのが1871年。日本でいう明治四年。ですから統一国家としての歴史は意外と新しいドイツですが、その統一は普仏戦争と呼ばれる戦争に勝利することで実現しました。これはプロイセンという、ドイツの諸邦の中でこの時一番の実力を誇っていた国が、ビスマルクという傑出した宰相の指導の下にフランスと戦った戦争です。この時、よりによってパリのヴェルサイユ宮殿で統一宣言したり、多額の賠償金を課したり、アルザス・ロレーヌ(ドイツ語ではエルザス・ロートリンゲン)という国境の州を獲ったことが、フランス人の恨みを買います。


そして1914年~18年の第一次世界大戦で、両国は戦場


の最前線で向き合い、泥沼の戦闘を繰り広げました。フランスの東部に北はベルギー付近から南はアルプスの辺りまで、延々と築かれた塹壕で両国の兵士はにらみ合いと戦闘を行いました。この戦争は仏独両国、それにフランスと共に戦ったイギリスでも、数百万単位の兵士が戦死し、参戦各国に膨大な損失をもたらしました。どうにか勝利したフランスは、戦後のヴェルサイユ会議で、前の普仏戦争そして第一次世界大戦での恨みもあいまって、ドイツに対して「一生働いても返済できないほどの賠償金」を課し、さらに大幅な領土の割譲も行って、今度は逆にフランスがドイツ人の恨みを買います。


そして1933年にドイツの首相に就任したヒトラーは、19


39年に開戦された第二次世界大戦で次々と隣国を占領。そして1940年には、フランス軍を完膚なきまでに叩いて完勝し、フランスは1944年に連合軍によって解放されるまでの約四年間、ドイツ軍の占領下に置かれます。


第二次世界大戦でまたもや敗れたドイツはその後、西ドイツと東ドイツに分断。戦争にはさすがにもう、ほとほと懲りていたヨーロッパの人たち。特に仏独両国の間に位置して、この両国が戦争するたびに巻き添えを食ってきたベルギー・オランダ・ルクセンブルクの「ベネルクス三国」は、「もうこの両国が戦争しないようにするために」と、1951年にベネルクス三国と仏独(この当時は西ドイツ)、それにイタリアを加えて「欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)」を設立。話し合いの場を設けていくことで、もう戦争しないようにという枠組みを作ります。これが時を経て、現在のEUに発展していきます。


こういう枠組みを与えられたフランスとドイツ。言ってみれば半ば強引な縁談と言えなくもありませんが、徐々に双方の首脳同士が会談することで信頼関係が深まっていき、やがてお互いがお互いを最も必要とする友好関係にまで進展してきました。本当の感情の奥底には、やはり人間ですから複雑なものも抱えているとは思いますが、それでもそうした過去の恩讐を乗り越えて、今ヨーロッパとEUの発展に協力し合うフランスとドイ


ツの関係を見ると、「国と国との関係も、時が経てば変わるもんだ」という感を強くします。


長い年月と、数々の痛い思いを経験してきた末に築かれた、フランスとドイツの大人の関係。時には揉めたり、感情を露わにすることもありましょうが、それでも決定的な破局には至らない。ある程度の所で踏みとどまれる。そんな大人の関係を、私たち


日本は隣国と…。まあ、これは相手もあることですから、なかなか難しいですが、焦らず腐らず長い目で。時間をかけてじっくりと。歴史は時に、こういうことも教えてくれます。


今日もブログを読んでいただき、ありがとうございました。




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​小園 隆文 こぞの たかふみ

日本人のための世界史作家

080-7181-7900

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