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歴史と古典で日本を守った!

執筆者の写真: 小園隆文小園隆文

こんにちは。「日本人のための世界史作家」小園隆文です。今日もブログを読んでいただき、ありがとうございます。


現在、『十九世紀』というヨーロッパ史小説を執筆中ですが、書いている間にヨーロッパだけでは収まりきらなくなり、南北戦争時のアメリカ、幕末の日本にまで及ぶという、作者の当初の意図をはるかに超えた大作になってしまいました。


今回は、その幕末日本を書いている中での、一つの出来事を書きます。主人公は長州藩の志士、高杉晋作です。



文久二~三(1863~64)にかけて、長州藩は当時の孝明天皇や幕府の「攘夷決行」の命を受けて、馬関(下関)海峡で、異国船への砲撃を繰り返します。この馬関海峡は、当時すでに日本に往来していた欧米諸国の貿易船が、波の荒い九州南端を避けて、長崎➾馬関海峡➾瀬戸内海➾太平洋➾横浜と航行するための重要地点であり、この海峡を通過できないことは著しい経済的損失につながると判断したイギリスは、フランス・オランダ・アメリカにも声をかけて、四国連合艦隊を結成して、長州砲撃を決めます。


こうして文久三(1864)年8月、長州藩と四国連合艦隊との間で、「馬関戦争」と呼ばれる戦争が行われますが、圧倒的な戦力差の前に、わずか二日間の戦闘で長州藩は敗れます。


そして戦後の講和交渉。長州藩は家老・宍戸備前の養子、宍戸刑馬なる者を送り込みますが、この人物が実は高杉晋作。脱藩の罪で牢獄にあった高杉を、長州藩は家老の養子に扮装させて、使者として送り込みます。この時の長州藩は、前年の「八月十八日の政変」で京を追われ、幕府からは長州征伐を言い渡されるなど、まさしく四面楚歌。そんな危急存亡の中にある長州藩を背負って、列強との講和談判に赴く宍戸刑馬こと高杉晋作。


交渉の場に到着した高杉は、イギリスの外交官アーネスト・サトウによれば、『悪魔ルシファーのように傲然としていた』と、その回顧録『一外交官が見た明治維新』(岩波文庫)に書かれるほど。まさしく戦争に負けてからが本当の勝負!と言わんばかりの気合で、列強との交渉に臨みます。


その交渉では、概ね四国連合の言い分を受け容れますが、賠償金については「長州にそんな金はない。そもそもこれは幕府の命を受けて行ったもの。それゆえ金は幕府に請求しろ」と、責任を幕府になすりつけ、長州藩の支払いを拒否。実際にこの時の賠償金300万ドルは幕府が半分。残りの半分は、明治新政府が分割払いで明治七(1874)にやっと支払い完了。


もう一つは、下関の南端にある彦島という小さな島を租借したい、という四国連合の要求を断固拒否。この時、高杉は『古事記』(日本書紀という説も)の内容を、一番最初から滔滔と語り始め、「日本の領土は神々によって作られたものゆえ、外国人に貸すわけにはいかない」というような旨を伝え、古事記(または日本書紀)を語り続けながら、相手方を煙に巻き、結局話をうやむやにして彦島の租借を回避します。


高杉はこの数年前に、藩命によって清国を視察し、そこで清国が欧州列強の事実上のしょくみんちのようになっていることに衝撃を受け、帰国しています。また彦島を租借してしまえば、香港のように事実上の植民地にされてしまうのではないか?という恐れから、この租借を断固として拒否した、と言われています。


この「古事記(または日本書紀)を語る」の逸話は、この時に通訳として同席していた伊藤俊輔(後の博文)が、回想録で述べてはいるものの、この交渉当時の記録には残っておらず、事の真否は定かではありません。ですが外国との交渉に、ましてや負け戦の交渉に臨む時に、「これぐらいの気概を持って臨まねば!」と思わせ、気を奮い立たせてくれる逸話です。はるか後年、太平洋戦争に敗れての連合国との交渉の時に、「この高杉晋作がいてくれれば…」と感じるのは私だけでしょうか。


人の一生も国家の歴史も、いつも勝ったり、右肩上がりなんでことはありません。時に負けたり、上手く行かない時もあります。そんな時、自分または自国の根本を見失わずに、主張すべきは断固として主張して、こちらの言い分を貫き通す。そのために個人では確固とした自分の人生観を、国家としては揺るぎない歴史観を持つことの大事さ。それをこの高杉晋作の逸話から、改めて学ばせもらいましたので、発表いたします。


今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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​小園 隆文 こぞの たかふみ

日本人のための世界史作家

080-7181-7900

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