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繋善言轂 よきことつなぐこしき
文明史家・日本人のための世界史作家・生命力を高める文章家
小園隆文 です。
今日もブログを読んでいただき、ありがとうございます。
【裏・大河ドラマ】ブログ 家康が生きた十六世紀のヨーロッパ史。
前回のブログでは、フランス王シャルル八世がナポリ征服に向けてアルプス越え。
約五十年にわたる「イタリア戦争」が開戦。そしてローマに到達したところまでを書きました。
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1494年12月31日、シャルル八世は、自分のナポリ王即位に反対する教皇アレクサンデル六世を懲らしめてやろうと、勢い込んでローマ郊外に立ちます。ローマに入城したフランス王軍は、ローマ市内を流れるテヴェレ川に、教皇が立て籠もるカステル・サンタンジェロ(聖天使城)に向けて巨大な大砲を据え付けて威嚇します。しかし「その大砲を撃てば汝は永遠に神への罪を免れないぞ」と教皇から逆脅しをかけられ、大砲を撃つことができません。フランス王は「いとも敬虔なるキリスト教徒の王」を自他ともに認め、シャルル八世自身も根は敬虔なカトリック信徒。その地上におけるキリスト、「神の代理人」であるローマ教皇にこう出てこられてはお手上げです。まだ何のかんのと言っても、ローマ教皇の権威が効果を発揮する時代です。
そして、教皇アレクサンデル六世とフランス王シャルル八世との会談。シャルル八世は、「史上最悪」とも評されるほどに汚職と身内登用(ネポティズム)が著しいアレクサンデル六世を廃位するために公会議を、というところまで考えていました。当初のうちは。しかし相手は「教皇としては史上最悪」ながらも、「政治家としてはバランス感覚に秀でる」ともいわれる、齢六十を超えて数々の修羅場をくぐり抜けてきた老練な古だぬき。まだ二十歳を越えてそこそこの、しかも幼いころからイエスマンばかりに囲まれ、温室培養されてきたちょっと夢想癖の強い、世間知らずの王。役者の違いは明らかでした。
初対面で抱きかかえられて「我が息子よ」と持ち上げられた途端、もうシャルル八世は教皇の虜になってしまいました。こうなったらもう勝負になりません。会談はまるで赤子の手をひねるように、アレクサンデル六世のペースで進みます。教皇の廃位など、全く話題にも登らず、アレクサンデル六世の地位は安泰。まずこれを得ただけで、アレクサンデル六世の大勝利。そんな教皇は、まるで子供にご褒美を与えるかのように、フランス王軍の教皇領通過の許可を与えます。また息子のバレンシア枢機卿であるチェーザレ・ボルジアを「教皇使節」という名目で、フランス王軍に同行させることにも同意します。体のいい人質です。ですが、これぐらいですむなら安いもの。
こうして、すっかりアレクサンデル六世にあしらわれながらも、教皇領通過の許可は得たシャルル八世とフランス王軍。1495年1月にローマを出発し、目的地ナポリに向けて南下。ここまで来ればもう、行く手を遮る敵など本当にいません。翌2月、ついにナポリ到達。ここでも抵抗らしい抵抗はなく、5月にはナポリ王国全土をほぼ平定。念願のナポリ王国奪還を果たして王に即位し、副官のモンパンシエ公にナポリ統治を任せることにします。
しかしシャルル八世の「夢物語」においては、これはまだほんの序章、プロローグ。次の「夢想」は、自ら十字軍を率いてオスマントルコ帝国を征伐し、聖地エルサレムをキリスト教徒の手に取り戻すことです。その前進基地となるのが、ここナポリです。そして次の「夢想」へ向けてしばしナポリで骨休め。しかしその間に、シャルル八世とフランス王軍を取り巻く国際情勢は激変することになります。
考えてみれば、フランス王国を出発して約一年。今シャルル八世がいるのは、フランスからはかなり離れた南の地・ナポリ。兵員や物資の補給を受けるにも、南仏の港から船団をナポリに向かわせるか、陸路でまたもやイタリア半島を南下して来なければなりません。地中海にはナポリ王国のバックにいるスペインの海軍がにらみを利かせています。では陸路は…?これまではほぼ無抵抗で南下してきました。しかし今度は…?
この続きは次回のブログで。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
繋善言轂 よきことつなぐこしき
文明史家・日本人のための世界史作家・生命力を高める文章家
小園隆文
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