画像 イエズス会員と日本人 Wikipedia使用分より
こんにちは。
繋善言轂 よきことつなぐこしき
文明史家・日本人のための世界史作家・生命力を高める文章家
小園隆文 です。
今日もブログを読んでいただき、ありがとうございます。
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【裏・大河ドラマ】ブログ 家康が生きた十六世紀のヨーロッパ史。
スペイン王フェリペ二世、イングランド女王エリザベス一世、フランス王アンリ四世が死去し、新しい形勢に入った17世紀ヨーロッパの国政政治。
対立の軸となるのは、前世紀から引き続いてカトリックとプロテスタント、信仰の対立ですが、これに信仰にこだわらない各国の国益、さらにアメリカ新大陸やアジアへの植民・貿易・布教という新たな要素が加わってきて、その関係は複雑さを増してきます。
世紀を跨いで、相変わらず対立するのはフランスとハプスブルク家。西のスペイン、東の神聖ローマ帝国に挟まれているフランスにとって、ハプスブルク家は不俱戴天の仇です。それがためにフランスは、信仰はカトリックを共にしながらも、プロテスタントの北部ネーデルラント(オランダ)の反スペイン闘争を支持しますし、帝国内とのプロテスタント諸侯とも協力し、果ては異教徒イスラムのオスマン帝国とでさえも手を組むことを辞しません。
スペインは同君連合として、隣国ポルトガルを併合(1640年まで)。そしてイエズス会というローマ教皇の尖兵による、世界各地へのカトリック布教活動を軍事力で後押し。
ローマ教皇のおひざ元のイタリア、神聖ローマ皇帝のおひざ元ドイツは、共に各都市国家、中小領邦に分裂状態。
イングランドはステュアート朝初代国王ジェームズ一世の下、東インド会社を設立して東洋貿易に。反スペイン闘争を続けるオランダも、その闘争の資金源を得るために、やはり東インド会社を設立して、東洋貿易に乗り出します。
こうして複雑なヨーロッパ国際政治の一側面、スペイン・ポルトガル(カトリック)対オランダ・イングランド(プロテスタント)の対立構図を背景にして登用に乗り込んできたヨーロッパ諸国。そうした末に、(ヨーロッパから見れば)東の最果て・日本にたどり着いて、戦国時代の余韻が微妙にくすぶる国内情勢と絡み合っていきます。その姿勢は、カトリック側は日本でも信者を増やして、カトリックの影響力を広めていこうとするのに対し、プロテスタント側は「布教はいいので、貿易だけしてください」という実利重視。
オランダは、ポルトガルがスペインと同君連合で同じ国となったため、それまで貿易で利用していたリスボンに入港できなくなり、貿易面で痛手を食らっています。そのため、1602年に設立した東インド会社は単に貿易のみではなく、東洋でのポルトガル(=スペイン)の貿易拠点を攻撃し、さらには拿捕するなどの海賊行為も行っています。ヨーロッパでの対立をそのまま東洋と日本近海に持ち込んできて、仁義なき戦いを繰り広げています。
家康はウィリアム・アダムズやヤン・ヨーステンらを重用する傍ら、イエズス会の日本準管区長フランシスコ・パシオを駿府で謁見するなど、バランス外交を行います(慶長十一・1606)。イエズス会は1585年、時のローマ教皇グレゴリウス十三世によって、日本宣教の独占権を認められています。これに対してドミニコ会やフランシスコ会といった他の托鉢修道会は大いに不満で、これら両会は特に九州の大名を通じて独自ルートを通じて布教を図っていきます。大枠で言うと、イエズス会がポルトガル国王の保護を受けるポルトガル系。これに対してドミニコ会・フランシスコ会はスペイン系。同君連合とはいえ、その前もそしてポルトガルが独立する1640年以降も、両国は別の国だったわけですから、そこにはそれなりの対抗・対立感情があるわけです。カトリック側も決して一枚岩であるわけではなく、内部に微妙な対立を抱えながら、日本で活動しています。
対してプロテスタント側のオランダとイングランドに、共同歩調はほぼ皆無。プロテスタントの教義内容そのまま。お互い貿易が最大の狙いですから、むしろ微妙なライバル関係でもあります。ただ一点、「反スペイン」という点だけは立場を同じくしています。
こうしてキリスト教だけではなく、ヨーロッパでの複雑な国際情勢も持ち込みつつあるヨーロッパ勢。これがこの後、単に布教だけではなく、日本国内のいまだ微妙な政治情勢とも複雑に絡み合っていきます。特に家康が密かにその潜在力を恐れる、大坂城の豊臣家の残党…。
今回はここまでで。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
繋善言轂 よきことつなぐこしき
文明史家・日本人のための世界史作家・生命力を高める文章家
小園隆文
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