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【ドイツ・フランス・イタリア三国史】王はいるが私の方がふさわしい?王家乗っ取りのフランク王国史

執筆者の写真: 小園隆文小園隆文

こんにちは。文明史家・日本人のための世界史作家・生命力を高める文章家の小園隆文です。


ブログを読んでいただき、ありがとうございます。

今日は【ドイツ・フランス・イタリア三国史】ブログになります。


過去のブログを読んでいない方は、こちらからどうぞ。





732年トゥール・ポワティエ間の戦いでウマイヤ朝の軍を破ったシャルル・マルテルはその後もフランク王国の宮宰(首相)として活躍し、741年に死去します。死後はまた例によってフランク王国の慣習で、シャルルの地位と財産が6人の息子たちに分割相続されますが、その中でピピンが頭角を現し、最終的に父と同じくフランク王国全体の宮宰(首相)に就きます。


この頃のフランク国王は既に末期症状を示しており、対して取り上げるほどの人物が出ていません。つまりはシャルル・マルテルやピピンという有能な宮宰が切り盛りすることで、王国は何とか持っていました。


後のイギリスのように、「王は君臨すれども統治せず」という原則が完全に確立されていれば問題ありませんが、時代は弱肉強食の中世。腕に覚えのある人物であれば「隙あらば…」という野心がもたげてきても不思議ではありません…。シャルル・マルテルは宮宰の地位にとどまりましたが、その息子のピピンは…?


案の定ピピンは時のローマ教皇ザカリアスに対して、「王の称号を持つ者と、王ではないが王権を行使できる者、どちらが王たるべきか?」と尋ねます。これに対する教皇ザカリアス。当時ローマ教会は、東のコンスタンティノープル教会と対立関係にありました。そのコンスタンティノープル教会にはビザンツ帝国という、政治・軍事の後ろ盾があります。対してローマ教会にはそのような後ろ盾がなく、ローマに攻め込んでくる輩が出てくる度に、あちらこちらに支援を頼まなければならない始末。そんな窮状もあって、どうしても政治・軍事後ろ盾が欲しい。そんな思惑から「後者」、つまり「王ではないが王権を行使できる者」と返答します。


これにローマ教皇のお墨付きを得たと判断したピピン。751年に王を退位させて自らが国王に即位します。宮廷革命・クーデタ・王家乗っ取りです。こうしてフランク王国のメロヴィング朝は終焉し、新たにカロリング朝が始まりました。王朝名の由来は父シャルルのドイツ語読み「カール」から取っています。


さて乗っ取りで国王に即位したピピン。しかし自分のしたことにどこか寝覚めが悪かったのか、多少は良心の呵責や後ろめたさを感じていたのか。何らかの方法で自分の行為(いわば黒歴史)を正統化する必要を感じたのでしょう。即位に当たって司教が体に聖油を塗る「塗油」という、『旧約聖書』に基づくキリスト教の儀礼を取り入れます。こうして自らを神聖化して演出することで、自分の黒歴史を正統化しました。


またそれだけではなく756年、ローマ教皇ステファヌス二世の求めに応じて、北イタリアのランゴバルド王国を撃退し、その戦いで得た領地をローマ教皇に献上します。『ピピンの寄進』と呼ばれ、この領地が以後千年以上にわたってローマ教皇領として、イタリア半島に君臨し続けます。自分の黒歴史に目を瞑ってくれたローマ教皇へ感謝の想いを込めた寄付、といったところでしょうか。


こうしていわば共犯関係となったフランク王国とローマ教会。フランク王国は領土拡大の侵攻を「神の教えの普及のため」、ローマ教会は「いざという時の用心棒」と、お互いの目的のために利用し合って発展していきます。


日本史では藤原氏も平家も源氏も徳川家も、どんなに力があっても天皇家を乗っ取ろうなどと考えた勢力は出ませんでした。対してヨーロッパをはじめ世界の他の地域では、王家乗っ取りの話がごまんとあります。それだけ日本は本当に平和でありがたい国。そして天皇家・皇室がここまで続いてきたことも、とてつもない奇跡です。そのことを深く噛み締めていただければと思います。


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今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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​小園 隆文 こぞの たかふみ

日本人のための世界史作家

080-7181-7900

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